「チェックメイト」
主人公「……参りました」
頭を下げる。これで通算10戦10負。完全なる敗北だ。
リーダー「まあまあ強い方だが、やっぱ物足んねぇな」
足を組んで椅子に深く腰掛ける彼に、頭脳戦で疲れた頭のまま問いかける。
主人公「ここで、貴方に勝てる相手なんているんですか?」
負けておいて言うのもなんだが、これでも仲間内では連勝するくらいには強かった。
こんなにも負けるのは、まだ初心者だった頃以来だ。
(祖国の奴らにバレたら、思いっきり馬鹿にされるな……)
今回の対戦を振り返りながら肩を落とす。
リーダー「いるぜ。俺に勝てる奴」
主人公「──え?」
予想外の答えに顔を上げると、彼はやや眉間に皺を寄せながら言った。
リーダー「ファルだよ。あいつにだけは、なかなか勝てねえんだ」
それには何となく納得した。確かに、彼はこの手の勝負に強そうだ。
そして、目の前の青年がボードゲームに強いのは意外だった。
二人は一体、どんな勝負を繰り広げるのだろうか?
「ま、暇潰しくらいにはなったか。じゃあな」
チェス盤を片付けて去る背中を視線で追う。
ひらひらと振られた手は、気まぐれな狼の尾のようだった。