買い出しの帰り、組織のボスを見つけた。
何をしているのかと見ていると、向こうもこちらに気付いたらしい。
「ちょっと、こっち来て」
手を引かれ、路地裏へと駆け込む。
すぐに反転すると、彼はこちらの腕の中で縮こまりながら息を整えた。
傍目から見たら、恋人の逢瀬のようにも見えない事もない。
(……流石に、あり得ないけれど)
馬鹿馬鹿しい考えを振り払い、彼にちらりと視線を移した。
彼は何かを探すように往来を見渡している。
「少しだけ盾になって頂戴。厄介なのに追われちゃって」
息が首筋にかかる。漂う香りは香水だろうか。
この淑女が男だと言うのだから、世界は本当に広い。
「いったい何をしたんですか……」
ため息交じりに問うと、彼は呆れ果てたような笑みで答えた。
エウリペ「別に、よくある話だよ。いるんだよねえ……」
緑と紫の瞳が、猛禽類の如く鋭さを増す。
その急激な変化に思わず目を奪われた。
「……正義のために、俺に突っかかる馬鹿が」