「……ふむ」
ページを捲っては、理解不能な言葉の羅列に頭を抱える。
魔導書と呼ばれるそれは、この国の国立図書館地下にある、一部の人間しか入れない書庫に収められた物だ。
(専門外とは言え……ここまで分からないものなのか)
祖国で、いや世界中のあらゆる場所で、魔術の類が途切れて久しいこの頃。
その中で、ここまで多くの魔導書を集めた場所はそうそう無いと思う。
例え理解出来ないとしても、メンスウィリアを知るためにはこの手の技術も見聞するべきだ。
「おや、奇遇ですね」
主人公「うわっ」
どこからともなく現れた彼に、心臓が止まりそうになる。
ファルブロス「貴方も魔術に興味が?」
主人公「……はい、祖国にはなかったものなので」
少なくとも、嘘は吐いていない。そう自身を落ち着かせる。
ファルブロス「そうですか。……ですが、ここの棚は中級から上級の物ですよ?」
主人公「そうだったんですか……」
……まさか、内容を理解出来ない理由がそんな単純なものだったとは。
これはかなり恥ずかしい。
「初級の魔導書の棚はここから二つ前です」
主人公「あ、ありがとうございます……」
ファルブロス「……貴方が何故、魔術を調べているのかは詮索しませんが」
背後からかけられた声に硬直する。
だが、続いた声はどこか優しいものだった。
「そう簡単に覚えられるものではない、とだけ言っておきますよ」